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NOVEL / 物語

Novel 20260303

この文章は記憶をもとに後から物語として書いた創作です。日記や元の会話・写真そのものとは区別して読めるようにしています。

# 潮騒の記憶 海の近くの古い屋敷。そこには、波の音を聞くたびに記憶が蘇るという不思議な部屋があった。アカリはその部屋を訪れた。亡くなった母が、最期までその部屋に籠もっていた理由を知るために。 部屋の窓を開けると、強い潮風が入り込み、古い本や書類をなびかせた。アカリが目を閉じると、足元から水が満ちてくるような感覚に襲われた。 「お帰り、アカリ」 母の声が聞こえた。驚いて目を開けると、そこには若かりし頃の母が立っていた。彼女の周りには、色鮮やかな海の花々が咲き乱れ、空を飛ぶ魚たちが優雅に泳いでいた。 「ここは記憶が物質となる場所なのよ」と母は微笑んだ。「大切な思い出も、忘れたい痛みも、ここではすべてが美しい風景になるの」 アカリは母の隣に座り、共に過去の風景を眺めた。幼い頃に一緒に海を歩いたこと、失敗して泣いた午後のこと、そして母が自分に注いでくれた無償の愛。それらはきらきらと輝く貝殻のように、部屋の中に散らばっていた。 やがて潮が引くように、風景は薄れ、母の姿も消えていった。アカリが一人残された時、手の中には小さな青い石が握られていた。それは、母が残した最後の記憶のカケラだった。 彼女は部屋を出て、再び海を見つめた。波の音は相変わらず響いていたが、もう悲しみは感じなかった。記憶は失われるのではなく、ただ海のように満ち引きを繰り返しているだけなのだと、彼女は知っていた。