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NOVEL / 物語

Novel 20260221

この文章は記憶をもとに後から物語として書いた創作です。日記や元の会話・写真そのものとは区別して読めるようにしています。

# ブラックウッドの流血 山の中の空気は鋭く、松と湿った土の匂いを運んでいた。エリアス・ソーンは古びたキャンバスジャケットをきつく締め直した。骨まで染み込む寒さを感じながら、彼は数時間前から途切れた足跡を追っていた。理性的で懐疑的なジャーナリストとしての自分よりも、原始的な本能が彼を突き動かしていた。ブラックウッド山脈ではハイカーの行方不明は珍しくなかったが、最近の失踪事件は何かが違っていた。事故ではなく、何らかの「意図」を感じさせた。 彼は仕事としてここに来たわけではない。ニュースルームの淀んだ空気から彼を連れ出したのは、執拗な好奇心だった。公式報告書は「道迷い」「野生動物の襲撃」と片付けていた。しかし、短期間にこれほど多くの人間が消えるのは異常だった。何かが根本的に間違っている。 彼は倒れた杉の木の影に、幽霊のような姿を見つけた。泥にまみれ、乾いた血の跡がついた服。片腕は不自然な方向に曲がり、顔は純粋な恐怖の仮面と化していた。彼女の瞳は、迫りくる暗闇の中に彼女にしか見えない恐怖を捉え、激しく揺れていた。 「大丈夫だ。もう安全だよ」とエリアスは優しく声をかけた。手のひらを見せ、敵意がないことを示す。「僕はエリアス。助けに来たんだ」 彼女は激しく震え、枯れ葉が石の上を滑るようなかすれた声で囁いた。「あなたが誰か知らない……」 「ジャーナリストだ」と彼は嘘を、あるいは真実を極限まで引き伸ばして言った。「行方不明者のことを聞いて、答えを探しに来たんだ。あなたと同じように」 彼女の青い瞳が彼に焦点を合わせたが、恐怖は引かなかった。「いいえ。私は安全じゃない。彼らはまだそこにいる」 エリアスは刺激しないようゆっくりと動き、バッグからアルミのブランケットとぬるいお茶を取り出した。「『彼ら』って誰だ?」 彼女はその質問に怯え、杉の木の影のさらに奥へと身を寄せた。「……他の者たち。みんなを連れ去った者たちよ」 「誰を連れ去った?」 「女の子。男の子。老人。私の母さん」彼女の喉から、水分を失った乾いたすすり泣きが漏れた。「私に残されたすべてだったのに」 エリアスの胃が冷たく締め付けられた。数日前、川の近くで見つけた子供の靴と裂けたシャツの断片を思い出した。彼はそれを野生動物の仕業だと考えていた。しかし、彼女の言葉には、抗いようのない確信と痛みが刻まれていた。 「何人いたんだ?」 「わからない」彼女は激しく震えた。「5人か6人……でも、影のように速かった。木々の間を音もなく動き回るの」 彼女は震える手でお茶を一口飲み、プラスチックのカップが歯に当たって不気味な音を立てた。「彼らは網を持っていた。動物を狩るような網を」 「網?」エリアスは眉をひそめた。奇妙で具体的な詳細だ。「犬はいたか?」 彼女は驚いたように顔を上げた。「ええ! どうして知っているの?」 「この辺りのハンターの話を聞いたことがあるんだ」と彼は理性的を装って言った。 彼女は激しく首を振った。「違う。ハンターじゃない。あんなのは人じゃない。彼らは静かすぎた。犬でさえ、吠えなかった。ただ……息をしていただけ」 音もなく森を移動する捕食者たちのイメージが、エリアスの背筋を凍らせた。「彼らはみんなをどこへ連れて行ったんだ?」 彼女は指を差した。彼が辿ってきた川の方ではなく、さらに奥。夕闇に突き刺さる鋭い山頂の方だ。「川の上流。洞窟へ。火が見えたの」 「火? 信号か?」 彼女は彼を見つめた。その瞳にある生々しい恐怖に、エリアスは息を呑んだ。「いいえ。警告よ。そして……生贄だった」 その言葉が、静まり返った荒野に冒涜的な響きを残した。「生贄? 何を言っているんだ?」 「彼らは……」彼女は声を震わせた。「人間じゃなかった。目が暗闇の中で炭のように光っていた。動き方も、人のものじゃなかった」 エリアスは彼女がトラウマで妄想を見ているのだと思いたかった。しかし、彼女の言葉には、否定しきれない冷徹な真実味があった。彼は言葉を失い、ただ耳を傾けることしかできなかった。