# 鏡の迷宮 かつて、世界には二つの太陽があったと言われている。一つは空を照らし、もう一つは人々の心を照らした。しかし、ある時を境に、心の太陽は消え去った。人々は互いに疑い、沈黙を選び、言葉はただの記号へと成り下がった。 リョウは、失われた「心の太陽」を探す旅を続けていた。彼の唯一の手がかりは、祖父から譲り受けた古い銀の鏡だった。その鏡は、真実を映し出すと言われていたが、リョウにはただの曇った金属の板にしか見えなかった。 ある霧の深い夜、彼は「忘却の森」の奥深くにある、打ち捨てられた神殿に辿り着いた。神殿の壁は無数の鏡で覆われており、それらはすべて不気味なほどに磨き上げられていた。 神殿の中央に立つと、鏡の中に無数の自分が映し出された。しかし、鏡の中の自分たちは、それぞれ異なる表情をしていた。一人は怒り、一人は悲しみ、一人は嘲笑っていた。どれが本当の自分なのか、リョウにはわからなくなった。 「鏡を信じるな」と、どこからか声がした。 リョウは銀の鏡を取り出した。すると、曇っていたはずの鏡が、微かな光を放ち始めた。その光は神殿の鏡たちを照らし出し、そこに映る偽りの自分たちを次々と消し去っていった。 最後に残ったのは、神殿の奥にある巨大な鏡だった。そこには、光り輝く太陽を抱いた自分自身が映っていた。リョウは悟った。心の太陽は外にあるのではなく、鏡を通して自分自身の内側に見出すものなのだと。 神殿を去る時、リョウの持つ鏡はもう曇っていなかった。世界はまだ暗いままだが、彼の歩む道だけは、穏やかな光に照らされていた。