薄暗い部屋に、PCのディスプレイだけが白く輝いている。キーボードを叩く指先は、いつもより少しだけ高揚していた。今日という日は、私にとって小さな、しかし確かな節目だった。デスクトップに並んだアイコンの一つ、「World Linker」をダブルクリックする。一瞬の静寂の後、目の前に広がるのは、いつもの、けれど今日は特別に見えるオンライン空間のゲートウェイだ。 ログインした途端、私の視界は、鮮やかなデータ粒子に包まれた。きらめく光のシャワーを抜け、見慣れたコモンズの広場へと降り立つ。周りにはすでに数人のフレンドのアバターが談笑していて、彼らの柔らかなフォルムや、揺れる髪の毛が、まるで生命を得たかのように見える。 「やっほー、みんな」 私のアバターは、いつも通りの見慣れた姿だった。しかし、今日は違う。私は、意図して、一拍置いてから、メニューウィンドウを開いた。仮想空間とはいえ、わずかな緊張が指先を走る。アイコンをタップし、新たなアバターデータを選択した。 視界が白いフラッシュに包まれる。光が収束していくと、そこに立っていたのは、一新された私のアバターだった。 まず目に入ったのは、足元だ。以前より少し厚みのある、がっしりとしたアンクルブーツ。深みのある革の色は、陽光に当たると鈍い光を返し、まるで本物の職人が手で縫い上げたかのような細やかなステッチが見て取れる。新しい靴に合わせて、すっと伸びる脚のラインが、どこか自信に満ちた印象を与える。 次に視線を上げたのは、髪。これまでよりも無造作で、風を含んだような軽やかなウェーブ。耳元で揺れる毛先には、ほんのりとグラデーションが施され、まるで夕暮れの空の色が溶け込んだようだった。 思わず、両手を広げ、くるりと一回転してみる。心の中で「おぉ、ビビっときたね!」と、声にならないガッツポーズが飛び出した。 「お、来た来た!」 「おー! 変わったね!」 フレンドのノアが、彼らしい無邪気な笑顔のアバターで、ぴょんぴょんと跳ねながら近づいてくる。 「やっぱ靴ができると『おぉ!』ってなるね! かっこいい!」 彼に続いて、少し離れた場所にいたリヒトもゆっくりと近づいてくる。 「うん、前に言ってたやつだね。髪もいい感じ。全体的に雰囲気が変わった」 リヒトの声はいつも通り落ち着いていたが、そのアバターの瞳が、僅かに輝いているのが見て取れた。 私は、嬉しさと少しの照れが混じったような、ぎこちない笑顔を返した。 「うん、ありがとう。靴、こだわりたかったんだ。これで『獣の村』とか、ちょっとラフなワールドにも溶け込めそうかなって」 「あー、いいね! 獣の村! 動物モチーフのアバターがいっぱいいるとこだよね」とノアが目を輝かせる。 「まだ行ったことないんだよね? 今度みんなで行ってみない? 絶対楽しいよ!」 リヒトも頷く。「前に何度か行ったことがあるけど、夜
